Ti6Al4Vのエンドミル加工における切削抵抗と加工精度


 


島根県産業技術センター 佐藤公紀


 


要 旨


 難削材料の中でも、切削加工温度が高温になるといわれているチタン合金のエンドミル輪郭加工をおこない、切削抵抗、加工精度について調査した。その結果、切削抵抗は、インコネル718より小さく、加工精度も比較的良好であることが分かった。


1.緒  言


 切削温度が高温になるといわれ、被削性が悪いとされているチタン合金のエンドミル加工について予備実験をおこなった結果、インコネルに比べると被削性が比較的良好であったため、その加工精度を中心に検討した。


2.実験方法


 実験装置及び実験条件は、それぞれ表12に示す。


3.実験結果


3-1 切削抵抗


 12に切削条件と切削抵抗の関係を示す。2種類の工具を使用したが、加工能力はコーティングが優れており、切削速度200mminでも可能であったが、僅かばかりコーティングが大きな抵抗値を示した。切削抵抗は、切削速度の増加にともない僅かではあるが増大する。加工精度に影響を及ぼす切削抵抗の法線分力は、ダウンカットが大きく、アップカットの方が抵抗値は小さい。また、切削幅の増加にともない、切削断面積が増加することから、切削抵抗値は増大する。


3-2 加工精度


 コーティング工具の加工断面の形状を図34に示す。今回の切削条件の範囲では、若干の過切り込みがあったものの、加工誤差が±15μm程度と安定していた。断面形状は、前回のインコネルとほぼ同様なパターンとなった。コーティング工具のアップカットでは加工誤差が10μmであり、高精度な加工が可能である。


 図5の切削抵抗と最大加工誤差の関係から、法線切削抵抗が200N以内であれば、加工誤差10μmの加工が可能であることが分かる。


4。結  言


1)今回おこなった切削条件の範囲では、法線、接線分力ともに切削抵抗は500N以内であり、インコネル718の切削時より抵抗値は小さい。


2)切削条件によっては、過切り込みとなったり、切り残しがでたが、切削抵抗が小さかったことも起因して、加工精度は±20μm程度で比較的良好であった。


3)コーティング工具では、200N以内の法線切削抵抗のもとでの加工をすれば、最大誤差は10μm以内の高精度加工が可能であることが分かった。


表1 実験装置










工作機械


切削抵抗


 


波形解析


形状測定



立型マシニングセンター


切削動力計


 


デジタルオシロスコープ


タッチプローブ



三井精機製


キスラー社製


 


横河電機製


レニショー社製



VS 3A


3分力動力計9257B


チャージアンプ5007


DL1200E


MPIS



 


表2 実験条件








切削速度


送り


切り込み


切削幅


加工方法


切削油剤


工具


 


工具長



50100200mmin


0.05mmtooth


10mm


0.10.20.5mm


ダウンカット、アップカット


不水溶性切削油剤(JIS規格外)


TiAlNコーティング工具


超硬工具


32mm



 


 


 


 


 


 


Φ10mm


Φ10mm


 



 


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